えぬのざっかん

アラサーレズビアンの雑感/週末に更新する日記みたいなもの

さんじゅうきゅうこめ

 かえりみちの新幹線でこれを書いている。

 金曜日に有給を取って、二泊三日で東京へ旅行に行った。いつもなら年末年始にしているこの旅行をこの中途半端な時期にしたのは、単純に金銭面だけの問題だったけれど、この時期なら帰省で会えない人が出るということを気にしないで済むのはとてもよかった。

 朝、いつもの通勤時間よりも三十分ほど遅めに家を出て、新幹線に乗った。年末年始でもないこの時期に新幹線に乗っているのがとても違和感だらけで、あっという間に、夢みたいに三日間が過ぎていくんだろうなと思った。

 お昼すぎに東京について、その日泊めてもらう家主の子と合流した。何をしようかという話になったときに、じゃあ服を見立ててほしいと言ったのは、たしか私からだったと思う。まずはご飯を食べようと近くのビルに入って適当に店を決め、それぞれ頼んだものを食べながら、しばらく会っていなかったあいだのことを尽きずに話した。
 ご飯を食べたあとは、諸々をその子に丸投げして、あちらこちらと連れて行ってもらった。少し高めのブランドを見てからプチプラを見るのがいいのだそうで、そのようにして服屋をふたつほど回った。二月とは思えないほどの暖かさで、店に入った途端暑い暑いと連呼したのは私だった。結局服を買うことはなくウインドウショッピングだけだったのだけれど、とても楽しかった。
 夕方に他の友達も合流して、お家にお邪魔した。そこでは猫を二匹飼っていて、しばらく猫を触っていない私は思う存分猫を堪能した。猫たちがとても人馴れしていることも幸いして、少しの間抱っこさせてもくれた。
 四人集まってのご飯だったのだけれど、割とみんなお酒を飲める人たちで、用意してくれたおかずたちはどれもお酒にちょうどいいものばかりだった。お酒は飲めないけれどお酒のアテはとても好きなので、嬉々として海の幸を堪能した。少しだけお酒を頂いたらもうそれで酔ってしまって、私一人早々に床についたら、にゃんこのダイブをお腹に食らってウッと呻いたこともあった。
 翌日は車で駅まで送っていただいて、一緒に泊まった友達と何気ないことを喋ったり喋らなかったりしながら、乗換駅でまたねと別れた。

 二日目に遊んだのは、関東に住んでいたときに少しの間一緒に研修を受けていた同期たちで、会うのは二年ぶりだったけれど、二人とも全然変わっていなくてとても気楽だった。関東に遊びに行くんだと伝えたときに、すぐに目的地は決まってしまって、それからずっと楽しみにしていたのだった。
 お昼前に合流して、私のキャリーバッグを入れるためのロッカーを探してもらって、そこからやっと向かったのは上野の科学博物館だ。ミイラについての特別展をやっていて、一人がとても乗り気になったから、そこにしよう! となったのがひと月以上前のことだったと思う。
 一人で深海展や恐竜展を観に行ったことがあったから、混雑に関しては覚悟していたのだけれど、ミイラ展はそのふたつよりもニッチと言えばニッチで、そのせいか、ぎゅうぎゅう押し合って説明も読めないまま通りすぎてしまうということは全然なかった。
 全部の展示を観終えて時計を確認したら、二時間以上はゆうに経っていて、そりゃあお腹も空くよねと笑いあった。科学博物館に初めて来たと言う同期が、常設展も見てみたいとのことで、もともと外でビュッフェでも食べようと言っていたのを変更して、博物館のレストランでお昼ご飯にした。それぞれの近況報告などをして、みんな頑張ってるねえとしみじみ思った。
 結局常設展は少ししか見られなかったけれど、また来たいと思えたからいいか。

 夕方、駅で同期たちと解散して、その日お家にお邪魔する子と合流した。Twitterで知り合って二年ぐらいの、贔屓レベルでとても可愛がっている年下の子だ。可愛がっている以前にとても尊敬していて、いろんな話ができるのをずっと楽しみにしていた。
 スーパーで買い物をして、くたびれてよろよろしながらその子の住んでいるアパートへと付いていった。写真で見慣れた内装が私を出迎えてくれて、ああ、これは居心地がいいだろうなあと思いながら部屋に入って、荷物をおろした。
 好きなものを作るよと言ってくれていたのだけれど、この子が作るものはどれも口に合うだろうなと分かっていたから、その時あなたが食べたいものでいいよと伝えてあった。何でもいいよ、がとても悩まれる選択だとは分かっていても、本当にその子が作ってくれるのなら何でもよかった。人に料理を振る舞うのがとても楽しくて好きなんだと言っていたから、じゃあ好きなようにしてほしいなと思った。
 結果、写真でよく見る料理たちが机の上に並べられて、そして想像どおりそのどれもがちゃんとおいしかった。一番好きだなと思ったのは鮮やかなパプリカを使ったマリネで、これは家でも作りたいなと思った。弁当にも便利そうだと言うと、水気が多いからどうかなあと笑っていた。
 お酒どうする? とスーパーで聞かれたから、じゃあ、とかごに入れてもらったチューハイは、たまに家で飲んでいる果汁多めのもので、それを飲んでいたらやっぱり酔っ払った。お酒が回り切る前に、酔ったら返事が間延びするからね、しばらく黙り込むからねと伝えておいたのは果たして良かったのか悪かったのか。眠気をこらえていたらそのうち飛んでいったからそれは良かったと思いたい。
 テレビを眺めながら雑談をして、いつも夜も更けた頃に眠るというその子に合わせて、と言っても、早々に寝てしまうのがもったいなかっただけなのだけれど、久しぶりにずいぶんと夜ふかしをした。
 朝はゆっくりでも大丈夫だよと言われていたのに、ちゃんと朝のうちに目が覚めて、ベッドに戻るのも憚られたからこたつに転がって、起きる予定の時間までゲームをして過ごした。

 最終日は、趣味界隈の人たちでオフ会をしようと言っていた。前日までヒンヒン言いながら友達たちに相談しながら店を決めて、当日は先に着いていた人たちに先に入っててとダイレクトメッセージを送り、不安混じりに合流した。
 関東の界隈の人たちと会うのはこれが初めてで、妙に気を張っていたのだけれど、喋り始めてしまえば結局いつものTwitterでのやりとりと変わりなかった。とても楽しくて、長めにいられるお店を選んで正解だった。バカ話をしたり、好きなものの話をしたり、割り箸の袋で折り紙を折ったり、おしぼりで遊んだりしていた。
 ご飯のあとは、時間のある人でお茶をしようと言って、結局カフェが空いておらずカラオケボックスに入った。鑑賞会をしようという当初案を選ばなかったにもかかわらず、重たいだろうにパソコンを持ってきてくれた人には感謝してもしきれない。
 好きなドラマの最終話を見て呻いたり、映画の好きなシーンを! と後半残り二十分ほどを再生して呻いたり、口直しに明るいのを! とカートゥーンアニメでバカ笑いしていたら二時間はあっという間だった。
 やっぱり、駅でまたねとお別れして、気が緩んだのかどっと疲れの出た体を引きずって、帰途に着いている。数カ月の間、この連休を楽しみにやってきたから、今度は何を楽しみにしたらいいだろうかと途方に暮れながら。