えぬのざっかん

アラサーレズビアンの雑感/週末に更新する日記みたいなもの

ひゃくろくじゅうはちこめ

 去年の12月頃から地道にやってきた作業が、昨日終わりを迎えた。なにかと言えば、仲間内で作っていた合同誌の発刊である。

 

 きっかけは、通話アプリで何気なく話した、書きかけの作品を書き上げるための尻叩きに本でも作ろうか、という発言だった。締め切りがあれば、いくらなんでもちゃんと終わらせられるだろうという算段ぐらいしかなく、まあ出来上がったら通販で頒布すればいいやぐらいに考えていた。

 ら、あれよあれよという間にコミックマーケットに申し込むことになり、ハテナマークを浮かべつつも私が音頭を取ることになった。言い出しっぺでもあるわけだし、人にお願いするよりも任される方が気が楽な人間として、やるしかあるまいと、自分で自分の尻叩きをするはめになった。

 

 Adobeの月額課金で環境を整え、Indesignで版面を作るために本を買って軽く勉強し、参加者のみのディスコードのスレッドでたまに進捗確認をし、必要なイラストデータの依頼をかける。

 やってみると、大体仕事でやってるような作業ばかりが発生したので、家でも仕事してんなあと思いながらあれやこれやと作業を進めていた。しかしながら、通勤があまりにも可処分時間を奪っていて作業にかけられる時間が少ないことに気付き、先延ばしにしていた引っ越しを確定させることにもなった。引っ越しの要因はそれだけではないけれど、結果、格段に可処分時間が増えた。

 

 夏コミへの参加が確定すると、ふわふわしていたものが目の前にタスクとして立ち上がってきた。個人で本を作ったことはあるものの、そんなに大きなイベントに参加したことはないし、イベント参加自体も1回だけである。ほぼ初めてと言っても差し支えのない知識のため、先達にあれやこれやと相談しながら作業を進めた。

 

 7月下旬、なんとか入稿を終えると、一気に気が抜けてしまった。参加が決まった時点で宿なども決めていたので、当日までのタスクがほぼ残っていない。

 ならばと予定をこまこま詰めて、東京滞在のスケジュールはみっちりと埋まった。

 

 そうして金曜日の朝、キャリーに荷物を満載し、近くなった新幹線の駅まで現実味なく向かった。駅の売店に積み上げられたカールを見て、皆考えることは同じだなあと笑った。

 いつもいつも、新幹線に乗りながら、現実味がないなあと思う。この度もそうだった。持ってきた分厚い本を読み、買った朝ごはんを食べ

アイスを食べ、寒いなと思いながらダラダラしているとあっという間に東京である。

 金曜日は移動がメインなので、あとは友達の家にお邪魔して猫を構いつつのんびり過ごした。

 

 コミケ当日、夕方頃から降雨があるだろうと言うことで、そのつもりをしつつ駅へ向かった。電車に乗り込んで、あまりにも空いているのに驚く。前ってもっとぎゅうぎゅう詰めだった気がするけどなあ、と思いつつ、理由は分かっているので快適さを享受しつつ会場へと向かった。

 売り子をやってくれる子と合流して、積もる話をしながらサークル入場の列に並ぶ。台風のせいか予想よりマシとは言えどそれでも暑く、汗を拭いお互いを扇ぎながら会場に入った。

 

 自分のスペースに着くと、テーブルの下にきちんと出来上がった本が届いていた。真っ先に売り子の子に渡し、見本誌分を用意する。そのあとも着々と用意を済ませて準備が完了すると、あとは開場までのんびり待つだけである。

 

 10時半になると放送が鳴り、自然に周りから拍手が巻き起こる。一気にテンションが上がった。他のサークルに一般参加の方がいらっしゃる度にすごいなあ、羨ましいなあと思っていると、とうとううちにも買いに来てくれる人が現れて、自分たちがすきなものが認められたな、という喜びが湧き上がってきた。作って良かった、としみじみ噛み締める。同人誌の通販サイトに委託をお願いしていて、予約もぽつぽつと頂いているから、需要自体があることは分かっていても、悪天候の中来てくれる人がいるだろうかという不安がとても大きかったから、やっと肩の荷が下りた。

 

 そこからは、仲間内の人が来てくれたり、また買っていってくれる人が来てくれたり、と退屈せずに過ごすことができた。

 天候の様子を見て、撤収は予定よりずいぶんと前倒しになったけれど、その選択は正解だった。机周りを片付けて外でタクシーに乗り込む。乗り込んでしばらくすると、雨がぱらつき始め、タイミングが良かったんだなあと乗り込んだ面々で話した。

 駅に着いたころにはそれなりの降り方になっていたので雨止みを待ってみたけれど、ひどくなる一方とのことだったので、そこで切り上げておしまいとなった。

 

 また友達の家に戻り、用意してもらった晩ごはんを食べながら積もる話をする。お土産にと貰った好きなお酒がおいしくて、弱いのにカパカパ飲んだ。

 今度こうやってまた楽しくやれるのはいつだろうなあと、皮算用をしつつ夜を楽しんだ。

 

 今年の一大イベントはこれで終わりである。次の目標を何にするか考えないととぼんやり思っている。