えぬのざっかん

アラサーレズビアンの雑感/週末に更新する日記みたいなもの

ひゃくにじゅうきゅうこめ

 木曜日から休みを取って、旅行に行ってきた。

 この週末、久しぶりにバイトが休みだったので、そこで発生する連休を利用しない手はないと思ったのだった。一ヶ月半ほど前にそれが分かってから、ちみちみと準備をし、友達や知り合いに声を掛け、予定を立て、とやっていたら、あっという間に当日になっていた。

 

 なるべくいつも通りに起き、父親の弁当を詰め、バタバタと準備をし、妙に重くなったリュックを背負って駅へと向かった。

 いつもと同じ路線のいつもより少し遅い電車で新幹線の駅まで向かう。東京に行くときはいつも現実味がなかった。今回もやっぱりそうで、ほぼ使ったことのなかった駅だったからかなおさら、何年かぶりの新幹線に乗りながら、夢みたいだなあと何年か前と同じことを思った。

 

 昼過ぎに東京駅について、秋葉原に向かう。好きなアニメのコラボカフェがあるとのことだったので、行くしかないなあと予約を取っていた。ただ、予約時間までは割と間があったので、ヨドバシカメラをうろうろして時間を潰した。他に行くところを知らないので、延々と歩き回っていたらずいぶんとくたびれてしまった。

 十四時から予約を取っていたコラボカフェは、平日のせいかいくつか席が埋まっているだけで、周りに飾ってある原画やイラストや展示物を見て回りやすくてよかった。メニューを頼む毎にもらえるコースターは欲しいキャラのものを引き当てることをできず、物欲センサー……となっていたものの、フォロワーさんが交換してくださるといってくださって、何とか望みを繋ぐことができた。

 劇場公開当時の予告がプロジェクターで繰り返し上映されていて、それを眺めながらもぐもぐとラーメンを食べ、カフェラテを飲む。所々ミスリードを誘う構成になっているのは面白いなと思いつつ、これをリアルタイムに見られた人たちが羨ましいなとなった。映画の一作目が上映されたのは私の生まれ年なので、羨んだところでしょうがないし、一作目に関しては何年か前に4DXで観ることが叶ったので、これ以上望むまい。

 

 コラボカフェでお腹を満たしたあとは、夕方に友達のところにお邪魔するまでのあいだ、またヨドバシカメラで時間を潰した。歩き回ることは想定していたので、歩きやすいスニーカーにしてはいたものの、クッション性に乏しく、すぐ足の裏が痛くなってしまった。

 電車に一時間ほど揺られ向かったのは、数年前に私も住んでいた街だ。アパートの隣が空いているからと友達に誘われてから二年ほど住んでいて、今だって戻れるなら戻りたいくらいには住み心地のいいところだった。

 駅について友達と合流して、しばらく歩いて向かったのは、何年もずっとまた食べたいまた食べたいと言っていたラーメン屋さんだった。あっさりした醤油スープに手打ち麺、粗みじんにしたたまねぎがしゃくしゃくとアクセントになって、一度食べてからとても好きになった。

 久しぶりに行ったけれど味は変わっておらず、あーこれこれ……としみじみしながら食べ終えた。食べ終わってからはまたしばらく歩いて友達の家へと向かう。久しぶりに会ったからといってテンションの上がるような関係性ではもはやなく、おー久しぶりと言った後はいつも喋っているような話をしながら歩いていた。

 友達の家に着いてからも何気ない話をしながら過ごし、寝支度を整え、シャワーを浴び、くたびれた体を布団に横たえたら予想以上にくたびれきっているのが分かって面白かった。

 

 翌日、友達が用意してくれた朝ご飯を食べ、バタバタと支度をし、バスに乗って駅まで向かう。向かった先は上野の科学博物館である。

 せっかく東京に行くのに一人は寂しいとギャンギャンわめいていたら、フォロワーさんがじゃあご一緒しますよと手を挙げてくれたのだった。博物館に行く以外のことをほぼ決めていなかったので、それ以降の予定を丸投げしてお願いしますと頼んでしまった。

 合流した後、科学博物館に向かって、企画展の「木組  分解してみました」を観に行った。元々ものづくりが好きでこれを目当てにしていたのだけれど、来てみて正解だと思った。一ミリ、いやコンマ何ミリの精度で切り出され、組み合わされる木材はぴたりと合わさった断面が美しく、はあ職人技だなと何度もため息をついた。

 企画展を見た後は、常設展を下の階から見て回った。科学博物館には何度か来ているのだけれど、まだまだ見られていないところが多く、今度は丸一日をここに宛てねばと強く思った。

 

 科学博物館をでた後は、仲間内のフォロワーさんが美味しかったと言っていた府中焼きを食べに向かった。折よくレンタサイクルがあったのでそれに乗り、フォロワーさんの先導に付いていく。

 都内を自転車で走るのは初めてで、とても新鮮だった。このご時世、自転車で走る人も増えているのだろう、車で隣を抜けていく人たちも慣れているようだった。車道を走るのにそんなに怖い思いをすることはなかった。

 連れていってもらった府中焼きのお店は、評判通り美味しかった。特に、麺がこんなにも美味しいとは思っておらず、また食べたいものリストに追加が決定した。

 昼食の後は、私が行きたいと行っていたあちらこちらを案内してもらった。アメ横道具屋筋に浅草。浅草には二度ほど行ったことがあるものの、浅草寺の建物をお目にかかったことはなかった。タイミングが悪く、二度とも工事のためのカバーが掛かっていたのだった。

 この度はそんなこともなく、雷門をくぐって奥へと向かっていくごとに建物の大きさに圧倒され、本堂のたもとに着いたときにはすごいなとため息をついてしまった。

 お賽銭を入れ、お参りし、くじを引き、これまた久し振りの揚げまんじゅうを食べる。あいにくできたてではなかったのだけれどほのかに温かく、衣はさっくりとしていた。少し油の回った衣はこってりしていたものの、これも乙なものとすぐに食べ終えてしまった。

 適度にくたびれたしと喫茶店に寄り、雑談をする。普段からよく話しているに関わらず、話題は全く途切れなかった。気の合う人と一緒にいるのはやはり楽しくて幸せだなあとまた噛み締めた。

 駅まで送ってもらい、レンタサイクルを返却し、そこでフォロワーさんと別れた。また明日、と挨拶するのもまた珍しく、何となくくすぐったかった。

 

 電車を乗り継ぎ、迷いながら予約していたホテルに向かい、チェックインを済ませ、部屋に着いたらもうくたびれきっていた。普段そんなに歩かない上、あれやこれやと買い物をして荷物の重量が膨れ上がっていたので然もありなん。せっかくの東京なのだし、外食したかったのだけれど、ヘトヘトだったのでそれは諦め、階下のコンビニで夕食とおやつを買い込み、部屋で食事を済ませた。

 広いベッドだったけれど、マットレスの感触になれず、夜更かししたもののえらく早い時間に目が覚めてしまった。

 

 ホテルで用意されていた弁当をこれまた部屋で食べ、チェックアウトを済ませる。荷物もずいぶんと重くなっていたので、ホテルから発送手続きを済ませると、ずいぶん身軽になった。

 この日は創作系のイベントであるデザインフェスタに一般参加で行ってきたのだけれど、ずいぶんと行列ができていて、滞在時間はそんなに取れなかった。ふと寄ったブースのお姉さんの出身地がほぼ隣で笑ったり、バイト先が出展しているブースの行列が途切れずに挨拶を断念したり、あちらこちらをフラフラとして可愛いなと思ったグッズを買い込んだりとやっていると、あっという間に出発予定時刻が近くなっていた。

 昼食を摂らねばと思っていたのだけれどそのタイミングはなく、諦めてまっすぐ次の予定地である六本木の国立新美術館へと向かった。入口がどこか分からずフォロワーさんに迎えに来てもらい、仲間内の面々と合流した。

 

 あれやこれやと予定を詰めこんだものの、今回の旅の本命はここだった。

 庵野秀明展。

 集まった面々もエヴァ関係のツイートをしたり創作をしたりしているうちに仲良くなった人たちで、好きなものを仲良い人たちと一緒に楽しめる機会がずいぶんと久し振りだったので、なおさら感慨深かった。

 荷物を預けて入場待機列に並び、わいわいとしながら入場を待つ。入場早々、庵野監督若かりし頃の写真を使ったスタンドがお出迎えしてくれて愉快だった。

 それ以降は展示の量や質、展示方法の凝り方にすごいすごいと興奮しながらあちこちを見て回った。結果的に三時間ほど場内にいたものの、すべてを見尽くすことはできなかった。それほどに物量が圧倒的だった。フォロワーさんが、今度は午前中から来なきゃと言っていたのを、そりゃそうなるよなあと頷きながら、名残惜しみながらグッズ売り場へと移動した。

 あれやこれやと買い込んで広いホールへと出る。ざわざわと少しだけ落ち着いた喧噪の中、また雑談をし、駅でまた会おうねと別れた。

 

 前日案内してくれたフォロワーさんがその後も案内してくれて、美味しい夕食を食べ、普段ならできないような踏み込んだ話をし、東京駅に向かったときにはほぼ魂が抜けかけていた。

 現実に戻らなきゃいけない、でも家の布団が恋しい、そんなことを考えながら眠気に耐えて新幹線と電車を乗り継ぎ、自宅に着いたときには日付を少し越えていた。

 

 この度の旅行もとてもとても楽しかった。一人じゃ絶対に詰まらなかっただろうなと思う。その時好きなものが変わるたびに、周りの人に恵まれているなと実感する。今度はまた一年後くらいに遊びに行きたいなと思いながら、馴染んだ布団に潜り込んで爆睡した。